杭抜きハンドブック

I. 計画編

1. 杭抜き工事の目的とは?

杭抜き工事を行う目的によって、施工方法や抜き跡の充填注入材料などが違います。
既存杭を引き抜く目的には以下に示す2通りが考えられます。

  1. 地中障害物を撤去して更地にかえす
  2. 新築工事の計画があり、既存杭が新設の杭や山留に干渉するので引き抜く
    • 新設杭がアース杭
    • 新設杭が既製コンクリート杭
    • 新設の山留(SMWや親杭) などに干渉する

2. 杭抜き工事の計画とは?

杭抜き工事の目的は2通りありますが、どちらの目的にも共通して言えることは、まず既存杭を地中から抜き去らなければならないという事です。様々な引抜き方法がありますが、より確実に杭を地中から引き抜く事ができる工法を選択してください。
杭抜き工事で 最も問題になるのは杭を引き抜いた後の地盤状況です。更地にかえす場合と、新設杭干渉部とでは地盤に求められる強度も違います。それぞれに見合った注入方法や注入材料、配合強度を選択し決定してください。

3. 工法の選択

3-1 既製杭の引抜き

既製杭(既製コンクリート杭・ペデスタル杭・鋼管杭・松杭など)の引抜きにはPG工法を推奨します。

  • φ1,000mmまでの既製杭に適用できます。
  • PG工法ではφ1,000(拡大根固め部)-52Mまでの施工実績があります。
  • 不健全な杭をより確実に引き抜く事ができます。
  • PG工法では杭を引き抜きながら最深部より注入を行い、抜き跡全長にわたり均一な充填を行えます。
  • 新設杭干渉部での引抜きでは、独自の注入技術により最も影響が出にくい工法です。

3-2 現場造成杭の引抜き

現場造成杭の引抜きは大口径フライヤー工法を推奨します。

  • φ1,000mm以上の造成杭に適用できます。
  • 大口径フライヤー工法では、最大実績φ1,500mm-71M,φ2,500mm-30Mまでの施工実績があります。
  • 抜き跡注入にエアリフト・エアブローを採用しており、充填された注入材を均一に仕上げます。

4. 抜き跡の充填材に求められる強度・品質とは?

4-1 目的から決定される充填材強度とは?

抜き跡に充填される充填材に求められる強度はそれぞれの目的によって変わります。
また、抜き孔全長にわたり均一な充填が行われることを前提とします。

  1. 一般部(更地にかえす場合など)
    通常の充填材注入では、qu28=0.2~0.5N/mm2が標準となります。
  2. 新設杭干渉部
    新設杭干渉部での抜き跡に求められる強度は、通常の一般部での充填材強度とは異なります。基本的に新設杭干渉部では削孔時のズレや崩壊を防止するために、一般部に求められる強度よりも高強度な埋戻し充填が求められます。
    新設杭の施工では、軟弱な抜き跡部よりも若干硬めの抜き跡部の方が削孔はスムーズに行えます。また杭を引き抜いてから新設杭打設までの養生期間や新設杭の種類によっても抜き跡に求められる強度は違います。
①既製コンクリート杭打設部

既製コンクリート杭打設部においてはqu28=0.5~1.8N/mm2(養生期間28日~2日)程度が必要です。

②現場造成杭打設部

現場造成杭打設部においてもqu28=0.5~1.8N/mm2(養生期間28日~2日)程度が必要です。

【重要事項】
安定液を使用して打設するアース杭などで新設杭削孔内に既存杭がある場合は、基本的に何も注入しない、または砂での充填が望ましい。(充填材(セメント系)と安定液が混合され安定液が劣化するため)但し、新設杭削孔外周部に既存杭がある場合は、崩壊が予測されるので上記強度の充填材注入の必要があります。
オールケーシング工法・CD工法などの場合は通常の充填材注入でも特に問題はありません。

③SMW築造部

SMW築造部では、qu28=0.2~0.5N/mm2が標準となります。

本来ならば、充填材強度には設計時に見込まれた数値等も考慮しなければなりませんが、ここ に記されている事項は、あくまでも新設杭の施工の部分のみに反映されることであり、新設杭 の設計事項は考慮されていません。また各数値は、一般的な凡例と実測値(経験値)より決定 しています。さらに抜き孔全長にわたり均一な充填が行われることを前提とします。

4-2 充填材注入量の算出法は?

基本的な充填材注入量の下限値は杭体積量とします。

●PG工法
PG工法では、ケーシング内の土砂を杭と同時に引き上げる可能性があるので、ケーシング体積量を注入量の基本とします。新設杭干渉部では必ずケーシング体積量の注入を行ってください。

●大口径フライヤー工法
大口径フライヤー工法では、杭体積+5~10%見込む必要があります。これは、対象杭が現場造成杭の場合で、崩壊等により設計より大きな杭径になっている場合があるためです。

5. 埋戻し充填材の選択方法は?

埋戻しには大きく分けて三種類あります。

  1. 土砂(砂)
    土砂での埋戻しは、杭を引き抜いてからの投入となります。また充填しながらの転圧等も不可能ですので均一な充填とはなりません。埋戻し後、3日~7日程度まで抜き跡部の沈下が発生します。削孔にベントナイトを使用した場合、約一ヶ月程度沈下し続けた例もあります。
  2. 流動化処理土
    一般的に採用されています。 流動化処理土は生コンクリートのように外部からの搬入となりますので、現場施工に合せてタ イムリーに打設することが難しくなります。場所(地域)によっては、かなりの施工ロスが発 生します。また品質にもバラつきが多いのが現状です。
  3. 貧配合セメントミルク
    一般的に採用されています。汎用のプラント設備にて現場で混練作成ができるので、施工に合せてタイムリーに注入することができます。品質も水・セメント・ベントナイトなどの配合管理にて均一な充填材を作成することが可能です。
  4. 泥水固化法 ※特殊技術
    主に大口径フライヤー工法での現場造成杭の引抜きを対象とします。ベントナイト泥水(削孔泥水)とセメントミルクを現位置固化させる方法です。

II. 見積もり編

1. 見積りに必要な資料とは?

杭抜き工事の計画が明確になれば見積もりをご依頼ください。
必要な資料は以下の通りです。

  1. 杭伏図
    既存杭の杭径や杭長、打設工法が明記されたもの
    打設された工法によって引抜きの出来高は変わります
  2. 基礎断面図
    既存杭の杭頭が地盤から何メートル下にあるかの確認に必要です。
  3. 柱状図
    施工機械の選定に必要です。
  4. 敷地図
    施工機械の選定に必要です。
  5. 施工場所
    車両の搬入が可能かどうか、また回送費の算出に必要です。

2. 作業場の条件とは?

  1. 作業時間
    一日の出来高算出に影響します。
  2. 通行規制の有無
    搬入車輛の選定、回送費の算出に影響します。
  3. 敷地近接状況
    抜き跡注入の材料や出来高算出に影響します。

3. 既存杭引抜きの目的とは?

  1. 地中の杭を撤去し更地にする
    抜き跡注入の配合管理(材料使用料)に影響します。
  2. 新設杭干渉部の杭を引き抜く
    抜き跡注入の配合管理(材料使用料)に影響します。

III. 工事編

1. 杭抜き工事の準備として何が必要か?


  1. 削孔水、ケーシング洗浄、注入材の混練などに必要です。φ25mm程度をご用意ください。それ以下の場合は水槽などで対応しますが、ヤードの関係で複数台設置できない場合は、外部からの調達になってしましい費用がかかりますのでご注意ください。削孔水が足りない等になると大きく出来高に影響します。十分な水量を確保してください。
  2. 仮囲い、飛散養生
    近隣への飛散防止に必要ですのでご用意ください。通常の万能板程度が最低限必要です。近接状況によってはさらに高い養生が必要となる場合があります。
    ※杭抜き工事では基本的に風管(ジャバラ)養生はできませんのでご了承ください。
  3. 足元地盤改良
    重機の転倒防止に必要です。既存杭引抜工事の多くは構造物の基礎を解体した後の施工となります。基礎解体時に掘り起こされ、埋戻しされた地盤での施工です。重機の転倒災害防止の為にも地盤改良は必ず行ってください。
  4. 杭芯だし
    既存杭の位置は事前に(解体時など)正確に杭中心位置の測量を行ってください。埋め戻した後、地盤上に杭芯棒などで明示してください。

2. 杭抜き工事の品質管理とは?

2-1 PG工法の充填材注入方法

PG工法の埋戻し充填注入は基本的には貧配合セメントミルク注入です。流動化処理土を送ることも可能ですが、施工に合せたタイムリーな注入ができないので貧配合セメントミルクを推奨しています。
注入方法は、ケーシングと杭を同時に引き上げながら充填材を最深部より注入を行い(同時注入方式)、抜き孔全長にわたり均一な充填を行います。また、引き抜いた孔に確実に必要量を注入できるように液面管理方式を採用しています。

2-2 PG工法用に開発された充填材DN-S

PG工法では同時注入方式を採用しており、抜き跡全長にわたり均一な充填を行うことができます。しかし、ここで言う抜き跡全長にわたり均一な充填とは、強度的に均一という意味ではありません。
抜き跡地盤の解析検討を行う場合、抜き跡全長にわたり均一な強度の充填材注入を前提にしております。そこでPG工法ではノンブリージング材料の開発を行いました。ブリージングしない(セメント分の沈降がない)事によって深度方向に均一な強度を期待できます。
また早期ゲル化の効果もあり、地下水による充填材の浸食を早期に食い止めることが可能です。DN-Sは貧配合セメントミルクの添加剤として使用します。

2-3 PG工法の施工管理とは?(管理装置)

PG工法では施工管理装置を用いた一元管理を行います。

システム概要

●システム概要

「PG工法施工管理システム(KHK-01)」は、これまでの施工では分りにくかった地盤や施工の状況、また充填材の注入状況をリアルタイムで確認、施工に直結することができ、既存杭の引抜き工事を総合的に管理できるシステムです。本システムの使用により、施工品質管理の信頼性の向上と、総合的な施工記録を収集することが可能になります。

●測定項目
測定項目 目的
時間 施工サイクルの把握
深度(m) 削孔深度及びリアルタイムな必要注入量の計算・表示
速度(m/min) 地盤と速度の様々な相関関係データの蓄積
流量(L/min)
削孔水
削孔水と引抜残土量の相関関係解析データの蓄積
流量(L/min)
注入材
液面管理による注入状況データの採取及び抜き跡注入形状(換算掘削径)の把握
電流(A) 地盤状況の確認及び地盤と抜き跡注入形状の相関関係解析データの蓄積
●地盤状況の確認

電流値は、ある区間を掘削するのに要したエネルギーを単位時間あたりに評価するため、地盤の硬軟に近似した変化を示します。電流値の軌跡により地盤状況を確認します。ただし、電流値とN値との相関関係は必ずしも比例するとは限りません。

●施工状況の管理

「PG工法施工管理システム(KHK-01)」では、地盤状況だけでなくその他、施工管理に有益な情報を一元管理にて、リアルタイムの測定、表示、記録が可能です。測定、表示項目は上記表により、発注者及び後施工に関わる関係者に適切な情報をご提供します。

●「PG工法施工管理システム(KHK-01)」の特徴
  1. 施工管理・品質管理の信頼性の向上
  2. 施工状況をリアルタイムで確認
  3. 埋戻し充填材の注入量の計算等の面倒な作業が無く現場管理業務の簡略化
  4. 現場で保存した計測データを基に帳票作成(結果及び結果グラフの表示・印刷)が可能。
  5. 抜き跡(引抜孔)の換算掘削径の表示が可能で、既存杭引抜き跡の地盤環境の把握が可能。

PG工法施工管理システム(KHK-01)

2-4 大口径フライヤー工法での充填材注入

大口径フライヤー工法の埋戻し充填注入は基本的には流動化処理土です。
貧配合セメントミルクを送ることも可能です。注入方法には2通りあります。

①エアブロー及びエアリフト工法

大口径フライヤー工法では一般的な充填材注入方法として、杭を引き抜きながら上部から流動化処理土(貧配合セメントミルク)を流し込みます。しかしこの方法では杭孔全長にわたり均一な充填はできません。孔底には杭周辺の土がスライムとして堆積したり、上部からの流し込み方法により深度方向に不均一な充填となってしまいます。
大口径フライヤー工法では、抜き孔に流動化処理土を充填した後、エアブローもしくはエアリフトを行い孔内充填材を循環させ均一に仕上げます。エアブロー・エアリフトを行う前に、 必要に応じてスライム処理も行います。

②泥水固化法

泥水固化法とは、

  1. ベントナイト水にてケーシング削孔
  2. 杭を引き抜きながらベントナイト水を孔内に充填
  3. 引き抜き完了時、孔内はベントナイト泥水で満ちている
  4. 底に溜まったスライムを除去
  5. ベントナイト泥水にセメントミルクを注入
  6. エアブローでベントナイト泥水とセメントミルクを撹拌
  7. 均一な充填に仕上がります

泥水固化法は、まだ実績も少なくこれからの技術ですが、大口径現場造成杭の埋戻し充填には最適な方法になりうる工法です。

IV. 番外編

1. 既存杭を引き抜いた後の新設杭打設時に留意する点

杭を引抜いて充填材を注入した地盤と原地盤とには強度差があります。強度の違う地盤を一軸回転削孔すると、どうしても強度の弱い方向へ逃げて行こうとします。この傾向は削孔速度を速めるほど顕著に表れます。抜き跡地盤での新設杭削孔では、既製杭打設時の方が造成杭打設時より慎重に行う必要があります。

既製杭打設

  1. 削孔速度の低減
    削孔速度を通常削孔よりも低減することが必要となります。削孔速度の低減により地盤強度の弱い方向へずれていく傾向を抑えることができます。削孔速度の低減は確実に落ち着く深度まで続けなければなりません。
  2. スパイラルスクリューによる先行削孔
    スパイラルスクリューと適正な振り止めを用いて先行削孔を行い、ずれていく傾向を強制的に抑制することができます。
  3. ロックオーガーによる先行削孔
    新設杭の杭芯をロックオーガーにて先行削孔する。ケーシングを使用することによりズレを少なく削孔できるので(2)よりも確実性があります。
「見解」

(1) は最低限必要です。
(2) は(1)のみで不可能な場合に併用します。((1)と(2)を最初から併用することが望ましい)
(3) は(1)と(2)との併用作業でも無理な場合に活用しますが、最も確実な方法です。

※また、杭を抜いてからの養生期間が短い場合(7日以内)には、先行削孔時に削孔液(水など)を送ると、抜き跡に注入されている充填材が軟弱化し削孔ずれの原因になります。エアー併用にて先行削孔する事を推奨します。

現場造成杭打設

現場造成杭打設時に有効な方法は、上記(1)削孔速度の低減です。

2.ケーシングを用いた引抜き工法で引き抜けない杭

以下の通りです。

  1. 杭間が狭い(既製杭)
    既存杭と既存杭との距離が狭く、物理的にケーシングが隣の杭に当たってしまう場合です。杭頭を確認したときにわかるものもあれば、杭頭は離れていても地中で接近している場合があ ります。
  2. 継ぎ手部が外れ、杭が大きくずれている場合(既製杭)
    上杭と下杭がずれている場合があります。若干の目違いならPG工法で引抜けますが、大きくずれている場合はPG工法でも引抜き不可となります。
  3. 継ぎ手部で傾斜が極端に変わっている杭(既製杭)
    上下の杭はつながっているのですが、継ぎ手上部と下部で傾斜が変わっているケースです。溶接継ぎ手や特殊継ぎ手に多いようです。若干の傾斜なら引抜き可能ですが、極端に傾斜が変わっている場合、継ぎ手部を超えて削孔をしていると、既存杭をケーシングで削っていきながら破砕してしまう場合があります。
  4. 極端に湾曲している杭

    極端に湾曲している杭(既製杭・現場造成杭)
    極端に湾曲している杭はケーシング工法では引抜けません。実際に極端に湾曲している杭です。(右写真参照)ケーシングは杭の傾斜に沿って行きますが、湾曲には追随できません。
  5. 極端に傾斜(3°以上)している杭(既製杭・現場造成杭)
    ケーシングは基本的に杭の傾斜に追随していきますが、傾斜があまりにもひどい場合には追随しきれません。目安としては、3°以上の傾斜杭は引抜き困難となります。 等があります。

3. 既存杭引抜き工事における大きな考え違い

既存杭引抜工事では、地中に埋設されている状態でしか杭は上がって来ないということです。基本的な事ですが、忘れがちです。杭の先端が引き抜けていないと言われることがあります。

PG工法ではチャッキング爪で杭先端部以深の土ごと抱え上げてくることができます。(ケーシング先端部が土で閉塞された状態で、ケーシングから杭などがこぼれ落ちない状態)そうした状態でも杭の先端部(例えば既製コンクリート杭で先端がペンシル形状の場合)だけ 無い時があります。何故無いのかは解りませんが、現実にそういうことが起こります。杭先端部2~3M程度がバラバラになって上がってくることもあります。これも上記のような方法で引き上げたときに起こっています。

また現場造成杭の拡底杭を引き抜いた結果、拡底部が無いこともあります。図面では25mの既存杭を実際に引き抜いてみると7mしかなかった、など。このように、実際にそこに無いものは上がってきません。杭抜き工事では、図面通りの杭が引き抜かれるのではなく、今そこに埋設されている状態の杭が引き抜かれるということなのです。